近年、規制当局により、向精神薬投与例における心電図異常のリスクが問題視されている。これらの警告により、心拍数補正後QT間隔(QTc)のモニタリングが一般的になってきている。イタリア・ヴェローナの大学のM. Nose氏らは、抗精神病薬投与患者における心拍数補正後QT間隔(QTc)延長の頻度ならびに関連要因について横断的調査を行った。その結果、多剤併用とQTc延長が関連すること、ただしアリピプラゾールの使用はそのリスクを低下させること、抗うつ薬のcitalopramはQTc延長に関連することなどを報告した。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌オンライン版2015年10月15日号の掲載報告。

本研究では、横断的アプローチにより、任意に抽出した精神疾患患者におけるQTc延長の頻度を調査し、関連要因を調べた。一般的状況下で収集されたデータを基に、科学的知見の確立を目指して設立された研究グループSTAR(Servizi Territoriali Associati per la Ricerca)Networkに加盟しているイタリアの35の精神科施設で検討を行った。入院および外来における3ヵ月間の連続任意症例を登録してECGを実施し、ECG当日に向精神薬の投与を受けていた場合にデータを記録した。

主な結果は以下のとおり。

・試験には、2,411例が登録された。
・QTc延長の発現頻度は、カットオフ値450msとした場合、男性で14.7%、女性で18.6%であった。また、カットオフ値500msとした場合、男性で1.26% 、女性で1.01%であった。
・向精神薬投与患者の全サンプルにおいて実施した多変量モデル解析により、女性、年齢、心拍数、アルコールおよび/または薬物乱用、心血管疾患、心血管疾患の薬物治療、薬剤過量投与は、QTc延長と有意に関連していた。
・抗精神病薬投与患者においては、多剤併用とQTc延長との間に正の関連が認められた一方で、アリピプラゾールの使用はリスクを低下させた。
・抗うつ薬投与患者において、citalopramの使用および用量、抗うつ薬へのハロペリドールの併用は、いずれもQTc延長と正の関連を示した。
・抗精神病薬の多剤併用とQTc延長の関係が確認され、これは2剤以上の抗精神病薬の同時使用を避けることを推奨する現在のガイドラインを支持するものであった。
・また、citalopramとQTc延長の関係は、ルーチンにQTcモニタリングを行う必要性を支持するものであった。
・QTc延長を示す患者の割合が比較的低いことは、現在規制当局が発令している警告事項へのコンプライアンスが(良好であると)推察されると同時に、いくつかの向精神薬に関するQTc延長の臨床的関連への疑問を抱かせるものであった。

出典

Nos.ANh M, et al. Epidemiol Psychiatr Sci. 2015 Oct 15. [Epub ahead of print]