フランス・モンペリエ第1大学のP. Bernard氏らは、統合失調症患者を対象とした研究での6分間歩行試験(6MWT)の意義について、システマティックレビューにて評価を行った。その結果、統合失調症患者が6分間に早歩きできる距離(6MWD)は健常成人と比べ概して短いこと、BMIが高値、喫煙量が多い、高用量の抗精神病薬服用、身体的な自己認識が低いことと負の関係にあることなどを報告した。そのうえで著者は、統合失調症患者の身体的健康モニタリングに6MWTが使用可能であるとし、「今後の研究において、その予測因子としての役割を検討するとともに、その測定特性の評価を継続すべきである」と述べている。Disability and Rehabilitation誌オンライン版2014年8月7日号の掲載報告。

6MWTは、6MWDを測定する亜最大運動負荷試験である。研究グループは、介入効果を測定する際の6MWTの適合性を評価し、統合失調症患者の6MWDを一般集団およびマッチさせたコホートと比較、また6MWD決定要因の特定、6MWTの測定特性や品質手順などを調査した。5つのデータベースを用いて、2013年8月に公表されたフルテキスト文献をシステマティックレビューした。

主な結果は以下のとおり。

・16件の研究が選択された。
・6MWDの有意な増加を報告した介入研究がなかったため、介入の影響を測定する際の6MWTの適合性については評価を行わなかった。
・成人統合失調症患者の歩行距離は、健常成人と比較して全般的に短いようであった。
・レビュー対象となった研究の平均6MWDは、421~648mの範囲にあった。
・統合失調症患者において、通常、6MWDはBMI高値、喫煙量が多い、高用量の抗精神病薬、低い身体的自己認識と負の関係にあった。
・6MWTの信頼性は高かったが、これまで、その基準の妥当性について検討されていなかった。
・ガイドラインが存在するにもかかわらず、レビュー対象の研究で用いられていた6MWTの方法には大きなばらつきがあった。
・将来、統合失調症患者に対して推奨される身体的健康モニタリングに6MWT を含めるべきであることが示唆された。
・6MWTはリハビリテーションに影響を及ぼし、統合失調症患者における機能的運動能力を評価するものであった。
・治療介入の影響を6MWTで測定した患者は確認できなかった。
・以上の結果を踏まえて著者は、「臨床医は、統合失調症における機能的運動能力を考える際、過体重、抗精神病薬の使用、身体に関する自己認識などを考慮に入れるべきである。また、重篤な精神疾患患者に6MWTを施行する際には、米国胸部学会などによる国際標準に従うべきである」とまとめている。

出典

Bernard P, et al. Disabil Rehabil. 2014 Aug 7. [Epub ahead of print]