抗精神病薬は、脳卒中や死亡リスクの増加に関する重要な安全上の懸念があるにもかかわらず、BPSDの治療に使用されている。急性期病院で治療を受ける認知症および関連する行動障害の患者数は増加している。アイルランド・コーク大学病院のP Gallagher氏らは、認知症者に対する抗精神病薬の使用に関して調査を行った。QJM誌オンライン版2016年3月14日号の報告。
以下について検討した。
(1)認知症や急性疾患を有する患者の全国サンプルにおける入院前、入院後の抗精神病薬使用率の調査
(2)抗精神病薬の使用理由特定
(3)認知症者に影響を与える病棟環境の特徴の評価
(4)認知症特有の施策やトレーニング、評価、サービスの提供に影響を与える指導プログラムの利用可能性
公共急性期病院35件から、4パートの標準化された監査により以下が抽出された。(1)レトロスペクティブ医療記録660件(2)病棟環境のプロスペクティブ評価77件(3)臨床マネージャーへの病棟体制のインタビュー77件(4)上級マネージャーへの病院体制のインタビュー35件
主な結果は以下のとおり。
・認知症者に対する抗精神病薬の処方率は、入院前29%、入院中41%であり、4分の1は新規または追加で抗精神病薬が処方されていた。
・使用理由は、せん妄(45%)、認知症の症状(39%)、気分(26%)、精神状態(64%)、苦痛の要因(3%)であった。
・使用薬剤の適応症は、78%で記載されていた。非薬理学的介入は記載されていなかった。
・ほとんどの病棟において、オリエンテーションを促進するための環境が十分ではなかった。
・認知症特有のケア体制は、35施設中2病院で敷かれていた。
・スタッフのサポートやトレーニングプログラムは最適には及ばなかった。
・認知症者の12%は、新規の抗精神病薬の処方により退院した。
出典
Gallagher P, et al. QJM. 2016 Mar 14. [Epub ahead of print]