認知症患者では、嚥下の問題がないにもかかわらず摂食障害が起こりうる。東北大学の目黒 謙一氏らは、アルツハイマー病(AD)および血管性認知症(VaD)患者における、食物と味覚に関する認知機能を検討した。その結果、AD、VaD患者とも健常人と比較して食物および味覚に関する認知機能が低下していること、味覚認知障害が脳の島皮質の障害と関連していることを報告した。International Psychogeriatrics誌オンライン版2014年4月3日号の掲載報告。
健常対照(HC)15例、AD患者30例、VaD患者20例を対象とし、食物認知テストと味覚認知テストを行った。食物認知テストでは、日本で一般的な無臭の3つの食物のレプリカを被験者に見せ、それぞれの食物の名称を答えてもらった。その後、食品素材のレプリカを見せ、前述の食物の中にそれが含まれているかどうか質問した。味覚認知テストでは、12 種類の食物のレプリカを見せ、想定される味を質問した。
主な結果は以下のとおり。
・食物/味覚認知テストの結果、AD群およびVaD群は、健常対照群と比較してスコアが有意に低かった。
・AD群において、これらスコアはMini-Mental State Examination(MMSE)スコアと逆相関の関係にあった。
・ADおよびVaD患者50例中12例に、食事の摂取量減少が認められた。その12例のうち8例は味覚認知テストのスコアが低く、この割合は正常な食事量摂取患者における比率よりも高かった。
・濾紙ディスクによる味覚検査において、3群間で差はなかった。
・島皮質と味覚認知が関連しているという仮説を検証するため、MMSEをマッチさせた2つのADサブグループ(10例 vs. 10例)でPET検査を行ったところ、味覚認知機能が低いサブグループでは、脳の右島皮質の糖代謝がより低下していた。
・VaD 患者においても、島領域で同所見がみられる場合、味覚認知が障害されていた。
・以上より、認知症患者の介護に際しては、食事摂取という観点から認知機能を考慮することが重要だと考えられた。
出典
Suto T, et al. Int Psychogeriatr. 2014 Apr 3. [Epub ahead of print]