統合失調症患者は心血管疾患リスクが高く、全死亡率は一般集団と比較して高い。抗精神病薬の代謝系副作用は広く研究されているが、抗精神病薬にリチウムやバルプロ酸など従来の気分安定薬を併用した場合の、代謝系リスクへの影響という観点からの評価はない。米国・マサチューセッツ総合病院のBrenda Vincenzi氏らは、第2世代抗精神病薬とリチウムまたはバルプロ酸との併用治療が、併用しない場合と比較し、代謝アウトカムの不良と関連しているかを検討した。Journal of psychiatric practice誌2016年5月号の報告。

3件の研究からのベースラインデータ、BMI、胴囲、空腹時血糖、インスリン、HOMA-IR(ホメオスタシスモデル評価によるインスリン抵抗性指数)、インスリン感受性指数、グルコース消費、グルコースへの急性インスリン反応に関する測定データを用い分析を行った。

主な結果は以下のとおり。

・リチウムまたはバルプロ酸の併用は、併用しない場合と比較して、空腹時血糖、空腹時インスリン、HOMA-IRの差は認められなかった。
・インスリン感受性は、リチウムまたはバルプロ酸併用患者で低かった。
・リチウムまたはバルプロ酸を併用している患者では、従来の気分安定薬を併用していない患者と比較し、BMIが高かったが、統計学的に有意な差は認められなかった。

結果を踏まえ、著者らは「第2世代抗精神病薬とリチウムまたはバルプロ酸を併用している患者では、インスリン感受性やBMIをモニタリングすることが有益である」としている。

出典

Vincenzi B, et al. J Psychiatr Pract. 2016;22:175-182.