一般と比較すると、統合失調症患者の失業率は、全年齢層において高くなっている。これまでの研究では、統合失調症患者の失業や作業不良に対し、神経認知機能に焦点が当てられてきた。しかし、最近のいくつかの研究では、雇用困難を理解するうえで、認知機能障害と同等以上に臨床症状が重要であることが示唆されている。米国・David Geffen School of MedicineのKatiah Llerena氏らは、統合失調症患者の就職や仕事の成果を妨げる陰性症状への理解を深めることは、雇用を向上させる治療法の開発に不可欠であるとし、検討を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2017年6月7日号の報告。
対象は、雇用支援サービスを受けている統合失調症または統合失調感情障害患者112例。就労の有無に基づき、経験的および表現的な陰性症状が異なるかを判断した。さらに、労働者のサブセットにおいて、経験的「動機づけ」の陰性症状と労働成果との関連を調査した。神経認知機能は、MATRICS コンセンサス認知機能評価バッテリーを用いて評価し、臨床症状は、陰性症状評価尺度およびBPRSを用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・表現的でない、経験的な陰性症状は、就職、就業時間、賃金と関連していた。
・これらの結果は、年齢で調整した後に減弱し、有意な差は認められなかった。
著者らは「これらの結果は、雇用支援サービスを受けている統合失調症患者の雇用結果をより理解するうえで、経験的な陰性症状が重要であることを示唆している。他者との関わり、環境的、プログラム的要因との重要性を解くためには、さらなる研究が必要である」としている。
出典
Llerena K, et al. Schizophr Res. 2017 Jun 7. [Epub ahead of print]