現在、抗精神病薬の社会的認知に及ぼす影響に関する研究は少なく、また社会的認知機能に対するアリピプラゾールの影響に関してもよくわかっていない。オランダ・ユトレヒト大学のArija Maat氏らは、アリピプラゾールおよびリスペリドンが統合失調症患者の社会認知、神経認知に及ぼす影響を検討した。European neuropsychopharmacology誌2014年4月号の報告。
DSM-IV-TRで統合失調症と診断された80例(年齢:16~50歳)を対象に、8週間の無作為化、非盲検、多施設共同研究を行った。対象患者のベースラインおよび8週時点で複数のコンピュータ・テストを行い、反応時間を含む社会認知および神経認知を測定した。社会的機能は、Social Functioning scale と Quality of Life scaleにより評価した。本研究は、2005年6月~2011年3月に実施された。
主な結果は以下のとおり。
・社会認知および神経認知テストのスコアは両群ともに改善した。また、反応時間も同様であった。
・社会的認知テストのスコアは両群間でほとんど違いがみられなかった。
・アリピプラゾール群は「symbol substitution」の項目でより良い(より正確な)結果であった(p=0.003)。
・アリピプラゾール群はリスペリドン群と比較し、「emotional working memory」、「working memory」の反応時間が優れていた(各々、p=0.006、p=0.023)。
・これらのテストでの改善は社会的機能と相関していた。
・アリピプラゾール、リスペリドンはどちらも社会認知テストのスコアを改善させた。とくに、アリピプラゾール群はリスペリドン群と比較し、処理速度に好影響をもたらし、これが社会的機能の改善と関連していると考えられる。
・アリピプラゾールの認知に及ぼす長期的な影響について、さらなる検討が必要である。
出典
Maat A, et al. Eur Neuropsychopharmacol. 2014; 24: 575-84.