統合失調症において多飲傾向を認める患者は多い。多飲による過度な水分摂取は、低ナトリウム状態を誘発したり、水中毒につながることもある。奈良県立医科大学 永嶌 朋久氏らは、統合失調症患者の多飲と神経心理学的障害や脳の構造的変化との相関を検討した。BMC psychiatry誌オンライン版2012年11月26日号の報告。
対象は多飲を認める統合失調症患者、多飲を認めない統合失調症患者、健常対象者の各々8例。すべての被験者はMRIと神経心理学的テストを施行した。構造異常は、ボクセルベース形態計測(VBM)を用いて分析した。患者の神経心理学的機能は、統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J)を用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・両患者間で臨床的特徴の有意な差は認められなかった。
・多飲を認める統合失調症患者は、健常者と比較して、広範囲な脳容積の減少と神経心理学的障害を示した。
・多飲を認める統合失調症患者は、多飲を認めない患者と比較し、左側島皮質の有意な減少を示した。
・多飲を認めない統合失調症患者における神経心理機能テストの結果は、他の2つのグループの中間であった。
・統合失調症患者における多飲は、左側島皮質の減少により、深刻な神経心理学的障害を誘発する可能性があることが示唆された。
出典
Nagashima T, et al. BMC Psychiatry. 2012 Nov 26. [Epub ahead of print]