統合失調症と関連していることが知られているHPS4遺伝子は、臨床症状にどのように関連しているのか。獨協医科大学の倉冨 剛氏らは、統合失調症の実行機能障害に、HPS4遺伝子が関与していることを初めて明らかにした。また同遺伝子は、健常対照では作業記憶に関与していた。結果を受けて著者は、「動物モデルを用いたさらなる研究により、高次脳機能におけるHPS4が果たす役割を明らかにする必要がある」と述べている。(HPS4遺伝子:Hermansky-Pudlak症候群type 4遺伝子)BMC Psychiatry誌オンライン版2013年10月30日号の掲載報告。

研究グループは本検討において、HPS4と統合失調症患者または健常対照の認知機能との関連、また統合失調症患者の臨床プロフィールとの関連について調べることを目的とした。HPS4遺伝子多型と日本人の統合失調症患者の臨床症状および認知機能との関連を、SNPやhaplotype-based線形回帰分析法を用いて調べた。健常対照についても同遺伝子との関連を調べた。具体的には、HPS4の5つのtagging SNP(rs4822724、rs61276843、rs9608491、rs713998、rs2014410)と、それらの2~5のhaplotype遺伝子座を調べた。認知機能は、統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J)を用いて評価し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた症状の評価も行われた。

主な結果は以下のとおり。

・被験者は、統合失調症患者240例(男性139例、平均年齢48±12歳)、適合健常対照者240例(同:143例、48±13.0歳)であった。
・統合失調症患者において、rs713998が実行機能と有意に関連していた(dominant genetic modelにおいてp=0.0073)。
・健常被験者において、ワーキングメモリと2つの個別SNP(rs9608491、rs713998)の有意な関連がみられた(recessive modelにおいてそれぞれp=0.001、p=0.0065)。また、2つのhaplotype遺伝子座(rs9608491-713998、rs61276843-9608491-713998)の有意な関連もみられた(それぞれp=0.0025、p=0.0064)。
・HPS4遺伝子のSNPとPANSSスコアあるいは発病前IQ(日本版National Adult Reading Testで測定)との間に、有意な関連はみられなかった。

出典

Kuratomi G et al. BMC Psychiatry. 2013 Oct 30. [Epub ahead of print]