統合失調症および双極性障害における認知障害の基礎メカニズムについては、ほとんど明らかになっていないが、両障害における免疫異常が明らかになっており、炎症メディエーターが認知機能に関与している可能性が示唆されている。ノルウェー・オスロ大学のSigrun Hope氏らは、炎症マーカーと一般的認知能との関連を調べた。その結果、考えられる交絡因子で補正後も、両者間には有意な負の関連があることが示された。著者らは、「示された所見は、神経生理学的認知障害における炎症の役割を、強く裏付けるものであった」と述べている。Schizophrenia Research誌2015年7月号の掲載報告。
検討は、統合失調症スペクトラム障害121例、双極性スペクトラム障害111例、健常対照241例を対象に行われた。ウェクスラー成人知能検査(WASI)を用いて一般的知能を評価した。また、免疫マーカーとして、可溶性腫瘍壊死因子レセプター(sTNF-R1)、インターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)、オステオプロテゲリン(osteoprotegerin)、フォンウィルブランド因子(von Willebrand factor)、C反応性蛋白、インターロイキン6、CD40リガンドの血中濃度を測定した。
主な結果は以下のとおり。
・年齢、性、診断群で補正後、一般認知能との重大な負の関連が、sTNF-R1(p=2×10-5)、IL-1Ra(p=0.002)、sCD40リガンド(p=0.003)について見つかった。
・その関連は、教育、喫煙、精神病および情動症状、BMI、コルチゾール、薬物治療、血液サンプリングの時間など考えられる交絡因子で補正後も、有意なままであった(p=0.006、p=0.005、p=0.02)。
・サブグループ分析において、統合失調症患者では、一般認知能とIL-1Ra、sTNF-R1との関連が有意であった。また双極性障害患者では、sCD40リガンドとIL-1Raとの関連が有意であり、健康対照では、sTNF-R1との関連が有意であった。
出典
Hope S, et al. Schizophr Res. 2015; 165: 188-194.