プライマリ・ケアにおける抗うつ薬の適応外処方を調査し、適応外処方の科学的サポートレベルについて、カナダ・マギル大学のJenna Wong氏らが、検討を行った。BMJ誌2017年2月21日号の報告。
効能・効果ベースの電子処方箋システムを用いた、プライマリ・ケア医による抗うつ薬の処方に関する記述的研究。対象施設は、カナダ・ケベック州の2つの主要都市センター周辺のプライマリ・ケア施設。対象は、2003年1月~2015年9月に対象医師を受診し、電子処方箋システムにより抗うつ薬を処方された18歳以上の患者。主要アウトカムは、クラスおよび個々の抗うつ薬の適応外処方の普及率とした。抗うつ薬の適応外処方は、以下の各カテゴリにおける処方割合として測定した。(1)各適応症に対する処方薬使用をサポートする強力なエビデンス、(2)処方薬の強力なエビデンスはないが、同クラスの他剤使用をサポートする強いエビデンス、(3)処方薬および同クラスの他剤使用をサポートする強力なエビデンスがない。
主な結果は以下のとおり。
・抗うつ薬の処方箋は、医師174人より2万920例の患者に対する10万6,850件であった。
・クラス別では、三環系抗うつ薬の適応外処方が最も高かった(81.4%、95%CI:77.3~85.5%)。とくにアミトリプチリンが高かった(93%、95%CI:89.6~95.7%)。
・不眠症に対するトラゾドンの使用は、抗うつ薬の最も一般的な適応外処方であり、すべての適応外処方の26.2%(21.9~30.4%)を占めていた。
・すべての適応外処方のうち、わずか15.9%(13.0~19.3%)が、それぞれの適応症に対する強い科学的エビデンスを有していた。
・処方薬の強力なエビデンスはないが、同クラスの他剤使用をサポートする強いエビデンスを有する適応外処方は、39.6%(35.7~43.2%)であった。
・処方薬および同クラスの他剤使用をサポートする強力なエビデンスがない適応外処方は、44.6%(40.2~49.0%)であった。
著者らは「プライマリ・ケア医による抗うつ薬の適応外処方は、同薬剤の科学的エビデンスは少ないまでも、同クラスの強いエビデンスを有することが多かった。処方の決定を最適化するために、抗うつ薬の適応外使用に関するエビデンスを生成し、プライマリ・ケア医に提供することが重要である」としている。
出典
Wong J, et al. BMJ 2017;356:j603