認知症は公衆衛生上の大きな問題であり、ますます多くの認知症患者が合併症治療のために急性期病院へ入院している。一方で、急性期病院における認知症患者の看護に関する問題は、明らかにされてこなかった。愛媛大学の福田 里砂氏らはフォーカスグループインタビュー(FGI)を用いた質的研究を行い、主な問題として、さまざまな問題や困難が相互に作用して悪循環に陥っていること、看護師は矛盾を感じながらもそのような状況に対応するため最善を尽くしていることの2点を示した。International Journal of Qualitative Studies on Health and Well-being誌オンライン版2015年2月24日号の掲載報告。
研究グループは、2008年2月~12月に西日本の急性期病院6施設においてFGIを実施した。対象はICUを除いた外科および内科病棟の看護師で、看護師歴3年未満、最近配属された病棟で認知症患者の看護の経験がない看護師および看護師長は除外された。インタビュー時間は1~1.5時間であった。
主な結果は以下のとおり。
・参加者は計50人で、平均経験年数は9.8年であった。
・8つのフォーカスグループが得られ、急性期病院における認知症患者の看護に関する問題は7つのグループに分類された。
・そのうち3つのグループ[問題となる患者の行動、問題が繰り返し起こること、問題が多くの人々(家族や同室の患者)にも及ぶこと]は相互に作用し、悪循環となっていることが判明した。
・看護師の経験不足や病院の体制が整っていないことが、この悪循環をさらに悪化させていると思われた。
・この悪循環に対処するため、看護師は自分たち自身あるいは病院のために対策を講じていた。
出典
Fukuda R, et al. Int J Qual Stud Health Well-being. 2015;10:25828. eCollection 2015.