注意欠如多動症(ADHD)の治療で用いられる中枢神経刺激薬が、若者の睡眠の変化にどのような影響を及ぼすかを、米国・ネブラスカ大学リンカーン校のKatherine M Kidwell氏らが検討した。Pediatrics誌2015年12月号の報告。

2015年3月までに公表された研究を、CINAHL、PsycINFO、PubMedより収集し、検討を行った。適格基準は、ADHDを有する小児および青年の研究、中枢神経刺激薬への無作為化割り付け、および客観的な睡眠指標を用いた試験とした。重要な変数に関連する情報が含まれない研究は除外した。研究レベル、小児レベル、睡眠データは独立した2人の担当者により抽出した。エフェクトサイズは、ランダム効果モデルを用い算出した。潜在的モデレータは、混合効果モデルを用い算出した。

主な結果は以下のとおり。

・9本、246症例が抽出された。
・睡眠潜時の調整後エフェクトサイズ(0.54)は有意であり、中枢神経刺激薬による睡眠潜時の延長が示された。1日当たりの投与量が、有意なモデレータであった。
・睡眠効率については、調整後のエフェクトサイズ(-0.32)は有意であった。有意なモデレータは薬物治療期間の長さ、睡眠評価(夜間)の日数、睡眠ポリグラム/アクチグラフィー、性別が含まれていた。具体的には、薬物治療期間が長くなると、薬物治療効果は表れにくくなっていた。
・総睡眠時間のエフェクトサイズ(-0.59)は有意であり、中枢神経刺激薬の服用が睡眠時間の減少につながっていた。

結果を踏まえ、著者らは「本知見は、対象試験が少なく、方法論的なばらつきや未発表試験の不足などの限界がある」としたうえで「中枢神経刺激薬は、睡眠潜時の延長、睡眠効率の悪化、睡眠時間の減少を引き起こしており、全体的に若者における睡眠の悪化が認められた。このことから、小児科医は、睡眠に関わる問題を慎重に監視し、最適な睡眠を促進する治療を検討することが求められる」とまとめている。

出典

Kidwell KM, et al. Pediatrics. 2015;136:1144-1153.