注意欠如多動症(ADHD)患者の大半は、うつ症状に代表される、その他の関連症状を有している。ADHDに関与している可能性のあるメディエーターの1つメラトニンは、サーカディアンリズム、神経機能およびストレス反応を調節していると考えられている。スペイン・Clinico San Cecilio Hospital のIsabel Cubero-Millan氏らは、ADHDのサブタイプにおける血清中メラトニン濃度の状況、およびメチルフェニデート(MPH)が及ぼす血清中メラトニン濃度やADHDに併存する症状への影響を検討した。International Journal of Molecular Sciences誌2014年9月号の掲載報告。

本研究では、(1)ADHDサブタイプにおける血清中ベースラインメラトニン濃度の日内変動および夜間分泌、(2)MPHの慢性的な服用が血清メラトニン濃度ならびに症状に及ぼす影響、について検討した。ADHD(DSM-IV-TR診断基準による)小児136例を、Children’s Depression Inventory(CDI)を用いてサブグループに分類。登録時および治療開始4.61±2.29ヵ月後に血液サンプルの採取(20:00と9:00)と、尿の採取(21:00から09:00までの間に)を行った。メラトニンとその尿代謝物を、ラジオイムノアッセイRIA法により測定した。STATA 12.0を用いてファクトリアル解析を行った。

主な結果は以下のとおり。

・ADHDのサブタイプである多動性衝動性優勢状態/行為障害(PHI/CD)小児において、併存するうつ症状に影響することなく、血清中メラトニン濃度は高値を示していた。
・MPH服用は、血清中メラトニンプロファイルに影響を及ぼさずに併存する症状を改善した。ただし、ADHDの両サブタイプで6-s-メラトニンの排泄が減少した。
・以上から、未治療のPHI/CD小児における、血清メラトニン濃度増加の主因は、崩壊した神経内分泌の均衡の部分的な恒常性の回復によるものと思われた。
・MPH服用による脳メラトニン代謝の差が、臨床的ベネフィットに関与している可能性が示唆された。

出典

Cubero-Millan I, et al. Int J Mol Sci. 2014; 15: 17115-17129.