メタボリックシンドローム(MetS)は双極性障害患者でよくみられ、一般集団と比較し相対リスクは1.6~2倍といわれている。このリスク増加は、不健康なライフスタイルや薬物治療に起因すると考えられている。これまで、抗精神病薬や気分安定薬は、体重増加やMetSと関連付けられてきたが、抗うつ薬の影響については総合的に評価されていなかった。イタリア・トリノ大学のVirginio Salvi氏らは、抗うつ薬の種類とMetSリスクとの関連を評価するため検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2015年9月26日号の報告。
本横断的研究では、双極性障害患者294例を連続登録した。MetS診断には、修正NCEP ATP-III診断基準を用いた。患者に使用された抗うつ薬は、一般的な分類名(SSRI、TCA、SNRI、その他の抗うつ薬)、およびヒスタミン1(H1)受容体との親和性を考慮した薬理学的作用に従って分類した。
主な結果は以下のとおり。
・全般的には、抗うつ薬の使用はMetSと関連していなかった(有病率[PR]:1.08、95%CI:0.73~1.62、p=0.70)。
・ヒスタミン1受容体への高い親和性を有する抗うつ薬を使用した患者(15例)では、MetSの有病率の大幅な増加が認められた(PR:2.17、95%CI:1.24~3.80、p=0.007)。
・連続共変量モデルとして阻害定数(Ki)を含めた場合、KiとMetS有病率との間に逆相関を認めた(p=0.004)。
結果を踏まえ、著者らは「本研究は、双極性障害患者のMetSリスクを予測するためには、抗うつ薬の古典的な分類よりも薬理学に基づいた分類のほうがより有用であることを、臨床現場で初めて示した報告であり、臨床経過に関連する可能性がある。しかし、これらの知見が一般化できるかどうかを検討する、より大規模な研究が必要である」とまとめている。
出典
Salvi V, et al. Psychopharmacology (Berl). 2015 Sep 26. [Epub ahead of print]