セロトニンは行動調整の多くの部分に関与している。セロトニンの複数の役割を統合する理論的な試みにおいて、セロトニンが遅延や処罰などの行動選択に与える負担(行動コスト)を調整していることが提議されている。フランス・ピエール・エ・マリー・キュリー大学のFlorent Meyniel氏らは、セロトニンがそれらとは違うタイプの行動コスト、たとえば努力(effort)なども行動調整しているのかについて検討した。eLife誌2016年11月8日号の報告。

プラセボまたは選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるエスシタロプラムのいずれかを58人の健常者に8週間投与し、行動パフォーマンスを比較した。

主な結果は以下のとおり。

・エスシタロプラム群は、より多くの努力を生み出し、より高い報酬を得た。
・重要な点として、著者らの分析によると、この効果は金銭的インセンティブの変化によるものではなく、努力コスト(努力することの負担)の低減によるものであると示唆された。
・本分析によるセロトニンの効果は、行動調整におけるセロトニンの生理学的役割やうつ病に対する薬剤の臨床効果に新たな焦点を当てることを示唆している。

出典

Meyniel F, et al. Elife. 2016;5.