遅発性ジスキネジア(TD)は、長期間の抗精神病薬治療により発現する副作用である。TDは、精神疾患罹患率や死亡率の増加、著しいQOLの低下を伴うが、その治療方法は存在しない。統合失調症患者のTD治療オプションとして、クロザピンが使用される。興味深いことに、最近のいくつかの症例報告において、クロザピンがTDを増強または誘発することが示唆されている。韓国・仁済大学校のLyang Huh氏らは、クロザピン関連TDに対する低用量アリピプラゾール(0.5mg/日)治療の症例報告を行った。Turkish journal of psychiatry誌2017年秋号の報告。

主な内容は以下のとおり。

・患者は、精神症状が認められ精神科病棟に入院中の51歳韓国人統合失調症女性。
・クロザピン(200mg/日)治療開始1年後にTD症状の発現が認められた。
・クロザピン(175mg/日)に低用量アリピプラゾール(0.5mg/日)を併用したのち、運動症状に著しい改善が認められた。

著者らは「アリピプラゾールは、ドパミンD2受容体パーシャルアゴニストであり、セロトニン1A受容体に対するパーシャルアゴニスト作用およびセロトニン2A受容体アンタゴニスト作用を有する。ドパミン作動性傾向は、アリピプラゾール活性にとって重要である。加えて、アリピプラゾールの抗酸化作用は、クロザピンの神経毒性作用を管理可能である。われわれの知る限りでは、クロザピン関連TD治療に対する適度なアリピプラゾール(10~15mg)治療についての報告は1件のみであった。本報告は、クロザピン関連TDに対する低用量アリピプラゾール治療の最初の報告であろう」としている。

出典

Huh L, et al. Turk Psikiyatri Derg. 2017;28:208-211.