ベンゾジアゼピンおよび関連する薬剤(BZDR)は、アルツハイマー病(AD)の特定の症状を治療するために用いられることがある。しかし、高齢者ではBZDR使用に関連するリスクが高くなる。ADに対するBZDR使用についての報告はしばしばあるが、先行研究は、ADに対するBZDR使用の頻度に焦点を当てたものではなかった。東フィンランド大学のLaura Saarelainen氏らは、ADの有無別にBZDRの使用頻度について、5年間の追跡調査を行った。Journal of Alzheimer’s disease誌オンライン版2015年10月17日号の報告。
対象は、フィンランド全土のレジスタベースMEDALZコホートより得られた2005~11年にADの臨床的診断を受けたすべてのAD症例7万718例、およびそれにマッチさせた対照者。ベンゾジアゼピン(ロラゼパム、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、ニトラゼパム、oxazepam、temazepam)およびZ薬(ゾルピデム、ゾピクロン)を含むBZDRの使用頻度を、AD診断2年前~診断3年後のコホートより調査した。さらに、BZDR処方開始についても調査した。
主な結果は以下のとおり。
・AD患者におけるBZDRの使用頻度は、AD診断12ヵ月前から高くなり、AD診断6ヵ月後でピークを迎えた(発生率比[IRR]:2.6、95%CI:2.5~2.8)。
・ベンゾジアゼピンは、AD患者でより頻繁に開始されており、AD診断後6ヵ月の時点で使用頻度はピークに達し(IRR:4.5、95%CI:4.1~4.9)、対照者と比較し診断3年後まで3倍以上高かった。
結果を踏まえ、著者らは「BZDRによる早期対症療法は、AD治療ガイドラインに反している。BZDR早期治療により認知機能が損なわれることから、AD治療の有用性モニタリングが複雑化している可能性がある」とまとめている。
出典
Saarelainen L, et al. J Alzheimers Dis. 2015 Oct 17. [Epub ahead of print]