急速に超高齢社会に突入したわが国において、認知症診療のスキルは専門医だけでなく、かかりつけ医にも求められるようになってきた。2011年に新規抗認知症薬が次々と承認され、今後の薬物療法に関して議論が行われている。Tifratene氏らはデータバンクを活用し、フランス国内のアルツハイマー病(AD)の薬物療法の現状とその治療がフランスのADガイドラインに準じているかを検討した。その結果、ADのデータバンクがADの診療や関連疾患診療に有益な情報をもたらすことを、Pharmacoepidemiol Drug Saf誌オンライン版2012年6月20日付にて報告した。
2010年にフランスのアルツハイマーデータバンク(BNA)に登録された191,919例を横断的に分析し、ADと診断された患者(29.9%)と対象期間で少なくとも1つ以上の認知機能検査(MMSE)スコアを示した患者26,809例を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・76.9%の症例において、抗AD治療薬が投与されていた。
・アセチルコリンエステラーゼ阻害剤単独投与が48.3%、メマンチン単独投与が14.2%、併用投与が14.4%であった。
・20.7%の症例はガイドラインに準じた治療が行われておらず、低いMMSE平均スコア(13.6 vs 18.0、p<0.00001)、抗うつ薬の投与(29.2 vs 22.8、p<0.00001)、抗不安薬の投与(14.7 vs 12.3、p<0.00001)、抗精神病薬の投与(8.7 vs 4.9、p<0.00001)と関連していた。
・4/5の症例はガイドラインに準ずる治療が行われていたが、高度AD患者においてガイドラインに準じないアセチルコリンエステラーゼ阻害剤とメマンチンの投与が行われていた。
出典
Tifratene K, et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2012 Jun 20. [Epub ahead of print]