入院がん患者ではせん妄を発症することは少なくない。せん妄の治療においては、しばしば抗精神病薬が用いられる。日本医科大学武蔵小杉病院 岸氏らは、非定型抗精神病薬であるリスペリドンのがん患者のせん妄に対する有効性を検証するとともに、重症度による評価を行った。Psychiatry Clin Neurosci誌オンライン版2012年8月号の報告。
対象はせん妄を発症し、精神科のコンサルテーションを受けたがん患者29例(平均年齢:68.9±12.5歳、男性69%)。リスペリドンは1日1回、経口投与(平均投与量:1.4±1.3㎎/日)を行った。標準化された定量的な尺度を用いて、試験開始前および終了後(7日目)の認知機能、せん妄、身体的な機能障害を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・ルーチンの臨床処置におけるリスペリドン投与はせん妄治療に有効で、48%が反応、38%は寛解に至った。
・せん妄の重症度は79%の患者で減少した。
・せん妄の重症度の変化は、年齢、性別、一般的な認知機能障害、基礎疾患の重症度とは無関係であった。
・リスペリドンは、興奮や知覚障害の変化に加え、ほかのせん妄症状にも効果的であった。
出典
Kishi Y, et al. Psychiatry Clin Neurosci. 2012 Aug; 66(5): 411-417. doi: 10.1111/ j.1440-1819.2012.02346.x.